くせっけデザインのブログ

くせっけの人に幸あれ。

ひとり大量消費を経て、物欲が消えた今。

刺さるキーワード

一生モノ。
経年変化。
職人の技。

男性は特にこういったワードに惹かれることが多いのではないだろうか。

革でできた靴やカバン・小物など、こだわり抜かれたモノを時にはランドセルのように手荒く、時には宝物のように手入れしたりする。

ヘビーデューティクラフトマンシップという考え方に敬意を払い、何年も何年も同じものを使う。

実際にそういうったモノに囲まれているかはともかく、考え方に憧れる人は多いと思う。

ここ数年の僕もその一人だ。
特にファッションに関しては顕著で「この服は5年後も着ているかな?」とイメージしながら買い物をする。長いスパンをイメージして売り物やネットを見ると、大体のモノに興味がなくなる。長期的に見て使いたいモノはそうそう見つからないからだ。

売り手目線で考える

売り手からすればトレンドを意識した方が売れるし、長く同じモノを使われると新しいモノが売れない。それでも売らないといけないからだろうけど「環境に優しいモノ」というフレーズをよく見かけるようになった。環境に優しいモノなら、日々(作為的に)変わるトレンドに合わせて作りまくってもいいのかな?と疑問に思う。

愛着を持って長く使い続けてもらうこと以上に環境に優しいことがあるだろうか。

と、今ではそんな考えに至っているのだけど僕も二十代前半の頃はトレンドに流されまくっていた。自分に軸がないから、移り行くトレンドに振り回されて昨シーズン来ていた服に愛着が持てず捨ててしまうなんてことを繰り返していた。心のどこかでは同じモノを長く使い続けたいと思いながらも、何を選べばいいかわからなかった。

価値観が変わったきっかけ

考えがぐるっと変わったのは初めてちゃんとした革靴を買ったときだった。地元の革靴メーカーが価格と品質のバランスが非常に優れていると評判だったので、緊張しながら一足の靴を買った。確か4万円しないくらい。この手のジャンルの商品は上を見たらキリがないが、当時の僕にとっては大冒険の金額だった。

大切に、といっても道具なので時には厳しい環境で使っていると不思議なことに手に入れた当初より輝きを放ってくる。素材の特性もあるけど、愛着という気持ちが乗っている感覚を初めて味わった。今でもその靴は現役で6年くらいになる。軽く10年以上履き続ける方もいるからまだまだだけど、もはや体の一部となってきている。

この感覚を味わってから、「買い物は買った瞬間が一番ワクワクするもの」「後は劣化する一方なのでいかに綺麗に維持するか」という価値観が変わり、愛着のピークが遅れてくるモノを選ぶことが一つの価値基準になった。

宝物とは何か

それに加えて近頃は作り手の人柄やモノが生まれたストーリーに付加価値を感じている。

  • 前述の革靴メーカーが作った、B級扱いされて本来市場に出回らない革に切り込みのデザインを加えて販売した革靴

  • 地元のプリント工場にお願いした、妻が書いてくれた似顔絵をプリントしたTシャツ

  • 退職のときに尊敬している元上司が僕をイメージして選んでくれたタオルハンカチ

これらは全て何にも変え難い宝物だ。

身の回りにやたらめったらモノが溢れることのないように意識しているここ数年は、選抜メンバーのような(僕にとって)良いモノに囲まれていて楽しい。

買うことがピークの物欲は年々消えつつある。
金額ではなくストーリーのある僕だけの宝物と一緒にこれからも長く過ごしていきたい。