くせっけデザインのブログ

くせっけの人に幸あれ。

パラアート展プロデュースを振り返り。展示方法・アイデア

フリーランス初仕事

フリーランスになって初めて決まった
仕事だったパラアート展のプロデュース
が終わりました。

『すみだスマイルフェスティバル 2023アート展』

2023年12月6日(水)から10日(日)
までの開催期間が終わり、短い期間に
関わらず300人の方が墨田区役所の
ギャラリーに足を運んでくださいました。

僕は展示構成、出展団体・学校との
コミュニケーション、グラフィックデザイン
スタッフの手配などを担当し、
約半年の準備と開催期間を経て
数えきれない発見がある仕事でした。

kusekke-design.hatenablog.com

当初は作品が集まりにくいのではないか
という不安ありましたが、結果的には
充分な約60作品が揃いました。

中には僕が直接足を運んで出展を交渉した
思い入れのある作品も。

どの作品も表現する楽しさに
立場も年齢差も関係ないことを
感じさせてくれるとても
素晴らしいものでした。

作品が多いことは嬉しい反面、
展示の難易度は上がりました。
スペース的な都合で一つ一つの作品を
綺麗に見せることが難しくなるのです。

更に作品の実物を会場に持ち込み
どの程度空間が必要なのか、
どういった固定方法ができるのかは
設営の日になるまで確定できない
条件であったこともあり
事前のシミュレーションと
設営日の土壇場力が試される展示でした。

想定どおりに行かなかった点も
もちろんありましたが、信頼できる方と
チームを組み設営にあたったことで
予想以上によい展示にすることが
できました。

kusekke-design.hatenablog.com

展示のテーマ

市役所時代に知り合ったアーティストの方と
シミュレーションを繰り返し展示方法を
決めました。

今回のアート展は、シンプルに芸術作品を
展示する趣旨ではない点が特徴的でした。

ふらっとお越しいただいた方に
楽しんでもらうことはもちろん、
出品した墨田区内の作業所や
特別支援学級に通う方や
その周りで支えていらっしゃる方々に
喜びを感じてもらうことが第一の目的でした。

そのためにはアート空間としての
クオリティも確保する必要があり、
これまで市役所時代に取り組んでいた
『人の気持ちを伝えること』
今まさに培っている『デザインの力』
の二つを掛け合わせて挑んだ仕事でした。

貼り絵・切り絵などの大型作品

合作により複数人で制作された大型の
作品のパワーは実際の寸法より迫力が
あるものでした。

そのため、小さなサイズの作品が
目立たなくなってしまうことが
予想されたため、それぞれの良さを
打ち消さないよう混在させない
レイアウトにしました。

ポストカードサイズの作品

15枚のポストカードサイズの作品は
スペースの都合上、大型の作品の間に
配置されることになりました。

サイズのインパクトに負けないよう、
生成色のコットンネットに木のクリップで
挟む方法を取りました。

クリップで作品の一部が隠れないよう
特製の透明のテープをかまし
挟み込んでいます。

このような装飾は間違えると
作品のノイズになってしまう
可能性もありますが、今回の作品は
色もはっきりしており装飾に負けない力を
持っていたため、違和感は出ませんでした。

本来は壁のコーナーを目立たなくするため
直角の壁2枚をまたぐ形での設置を
検討していましたが、隣のエリアの作品の
サイズ感により実現できませんでした。

プロジェクションマッピング

墨田区立緑小学校の特別支援級の
子どもたちがナレーションやアニメーション、
撮影までも手作りしたこの作品は
大きなインパクトがある作品でした。

画面は幅3m高さ2m。
たっぷり空間を確保するために
アート展の設営はこの作品の位置を
決めるところから始めました。

この作品を展示した大きな意味の
一つとして、子どもたちが吹き込んだ
ナレーションがとても暖かみのある
ものだったことがあります。

会場にBGMを流すことは当初から
考えていましたが、この音声がとても
暖かく可愛らしいBGMとなって
会場の雰囲気をよりよいものに
してくれました。

コピー用紙に書かれた作品と大型の作品

作品の中にはキャンバスに描かれ額に
入ったものもあれば、A4コピー用紙に
書かれたものもありました。

その表現の幅広さや多様さが来場された方を
楽しませたことは言うまでもありません。

展示においては多様な作品がそれぞれ
輝くよう限られたスペースの中でも
たっぷり余白を取るように意識しました。

立体作品

数少ない立体作品が展示会場に
奥行きを持たせてくれました。

車イスや団体の方々の来場も想定し
広々させた位置関係や会場に入った際の
目線、来場者の導線を意識して
しました。

写真作品

出品された写真作品はサイズも用紙も
バラバラ。写真用紙の作品もあれば
コピー用紙に印刷されたものもありました。

壁面への展示はスパース的に難しく、
一方で立体作品が少ないことをふまえて
写真作品はモビールアート的な
展示方法を取ることに決めました。

天井にフックをかけ、ソフトワイヤーと
テグスで吊り下げ。

丸いパーツは白く塗装したフラフープです。

さすが墨田区ということもあり
スカイツリーの写真が多く出品されました。
この展示方法は「空」のイメージから
着想したもので、被写体のイメージに
合わせて高さを変えて吊り下げる
工夫をしています。

原稿用紙に書かれた作品

唯一原稿用紙にポエムが書かれた作品は
額に入っていないこともあり
平置きにこだわりました。

一般的な机の高さをダンボールを重ねて
再現し、サテン製の布で包んで
高級感を出した台の上に乗せました。

原稿用紙一枚では遠くから目立たないため
当初は書斎の世界観を再現し机と椅子、
デスクライトにペンまで小道具を
配置したかったのですが
実現しませんでした。

版画の作品

墨田区内の中学校の特別支援学級から
出品いただいた作品は同じ版画で、
かつ台紙も同じ紺色だったため
同エリアに展示し世界観を統一する
ことができました。

刺繍の作品

刺繍の作品は額に入っていたものの
一つ一つのサイズが小さかったため、
細かいディティールまで近くで見て
もらえるよう全て横に並べ
間隔をしっかり取りました。

技術の高い作品

作品の中には長年絵画教室に通っていたり
受賞歴のある方の作品もありました。

全ての作品が個性を放っていましたが
特に技術の高い作品は他の作品との
世界観のバランスを考慮し、
導線の最後の空間にまとめて配置しました。

団体の紹介パネル

『すみだスマイルフェスティバル』の
実行委員会を構成する団体の紹介パネルも
出展されました。

最低でもA1サイズ、中には模造紙サイズも
あるため空間が狭く感じられることの
ないよう工夫して配置しました。

このエリアは情報の密度も高いため
作品群とは分けてゾーニング
立体作品でその間を繋ぐレイアウトに
しました。

メインビジュアル看板

アート展を具現化するような
メインビジュアルは、区内の作業所に
通う方々に協力いただき描いてもらった
文字と絵を僕がレイアウトをしたもの。

最長180mの大判で印刷し、
区役所ギャラリー入口前に設置しました。

目を惹くビジュアルにしたかったのと
フォトスポット的な役割になると
いいなと思っていたので
アート展に関わった来場者の方々が
記念撮影している姿には感動しました。

墨田区役所のギャラリーは一面
屋外から中の様子がわかるガラス面に
なっています。

作品展示スペースの都合上、
可動式パーテーションで半面を
ふさぐ形になったため、その裏面にも
メインビジュアルを設置しました。

「外から見えたよ!」と言ってくださる
方もいたので効果的だったと思います。

作品の固定は土壇場の勝負

もっとも苦労したのは作品の固定でした。
ギャラリーの下見はしたものの
どのように作品を壁に固定するかは
情報が少なかったのです。

実際に取り掛かると壁によっては
ピンが刺さらなかったりテープが
剥がれやすかったりと試行錯誤の連続。

落下しないよう強く固定したい一方、
ギャラリーや作品を傷付けては
いけないのでアイデアを売り絞り
複合的な方法で固定しました。

画鋲やピンを使っているように
見える作品も、実は穴を開けないよう
挟み込んで支えているのです。

さいごに

設営は非常に体力を使いますし
固定するためのアイデアをひねり出す
ために頭も使いました。

それでも来場者の方、出品された方や
その周りで支えていらっしゃる方が
喜んでくださっている様子を見て
「頑張ってよかった」と心の底から
思いました。

また、アート展のプロデュースを経験して
普段当たり前に見ている景色にも
多くの方の苦労が込められていることに
あらためて気付きました。

最近は、絵を見るとその裏側を
覗き込んでしまいます笑

個人的には
「120点の尻尾が見えた100点!」
胸を張って振り返ります。

関わってくださった方、
ご来場いただいた方
皆さまに感謝します。