くせっけデザインのブログ

くせっけの人に幸あれ。

僕は「名刺」というものが大好きだ。

前職で使っていた名刺。表に本業、裏にボランティア活動の情報を載せたリバーシブル。

僕が大好きなものの一つに「名刺」がある。

名刺はその人の顔だ。何でもオンラインで済ませることのできるこの時代に、ちょっとしたお作法で相手に渡す所作なんかも微笑ましい。

ここ10年近く僕は市役所の職員としてまちづくりの仕事をしていた。カッコよく言えば新しい出会いこそが新しい仕事のきっかけだったので、出会いの瞬間に付加価値を付けたいと思い目を付けたのが名刺だった。

 

お勤めの方に話すとよく驚かれたのだが、僕が勤めていた市役所では職員に対し名刺は支給されない。市役所には窓口での受付や許認可など受動的な仕事が多いので、名刺を使う職場が限られるからだと思うが、よくわからない。では各々が自腹で作っているかというとそうでもなく、多くの職員は名刺用の印刷用紙を消耗品として購入し職場のプリンターで印刷して作っていた。デザインは過去に誰かが作った一般的なものを使い回していた職員がほとんどだ。

 

僕は名刺が支給されずデザインも統一されていないことをいいことに、自分でデザインしたものを自腹で印刷していた。ブラッシュアップを重ね、退職時点で最終的に到達したのが上にあるデザインだ。

 

なぜそんなことをしたかというと、名刺交換が単なる連絡先の交換で終わっていることが多いと思ったからだ。それでもしっかり認識されていればいいが、いっぺんに3~4人の市役所職員が名刺を渡したところで、同一のデザインでは誰が誰だかわからないとよく思っていた。

 

それでも人と関係を築く仕事ではなるべく覚えてもらったり、「この人と何かやってみたい」とか「その人なら相談しやすそう」と思ってもらえることは良いことだと考えていたので、オリジナリティに走ることにした。

 

表面のイラストは4~5年前にお世話になった当時大学生のボランティアの方が書いてくれたものだ。「名刺に似顔絵を入れたいから描いてほしい」とお願いしたらすぐ描いてくれたのだが、予想を遥かに超えるクオリティにに心を掴まれてしまった。これまで何度か名刺自体のデザインは変えているが、このイラストは一貫して使わせてもらっている。

 

ちなみにイラストがトレードマークになり過ぎて、僕が髪型を変えたら本人と識別されなくなったのですぐに元に戻したこともある。

 

多くの職員が横型の名刺を使っていたのであえて縦型にした。イラストは好評で、「似てますね」などと会話のタネになることも幾度となくあった。そこに反応を示すかどうかでグイグイいけるタイプの方かどうかを判別することもできた。

 

裏面は更に尖らせた。まちづくりの仕事で出会うユニークな方は本業の他に個人活動をしているタイプの方も多く、名刺を2枚もらうこともあった。それはそれでネタになるのだが、本業以外の情報を裏面に載せたら面白いと考えるようになった。大企業にはできない荒技だ。

 

この頃から現在も名乗っている「くせっけデザイン」という名前で、地元の子ども食堂などのチラシづくりのボランティア活動を始めていたのでその情報を載せた。あえて別物とわかるようにデザインの世界観はガラッと変えた。良いものができたと思った。

 

そもそも僕は名刺をデザインするとき、大切な情報は裏面に載せるべきではないと考えている。渡した相手がその場で裏面まで見てくれるとは限らないからだ。僕の名刺でいうイラストや名前など一瞬で見てもらいたい情報は表に集約するべきだと思う。だから裏面は、かなり僕に興味を持ってくれた人とのコミュニケーションを更に活気付ける役割を果たしてくれた。

 

相手方も市役所の人=お固いタイプと思ってくれているので、そのギャップもいい燃料となった。自分が気に入ったデザインやこれまでの反応をふまえ、僕は人に自分の名刺を渡すことが大好きになった。さぞ溢れる笑顔で名刺を渡していたと思う。これこそがデザインのあるべき姿だなぁと思う。名刺というツールが僕にたくさんの出会いをくれたといっても過言ではない。

 

逆に渡される名刺にもその人柄が表れているともらって嬉しくなるし、すぐ話のネタにしてしまう。そういう色を打ち出している方とは気が合うし、名刺を見返しても楽しい。今はスマホに登録する便利なアプリもあるが、僕が紙を残してしまうのはこういった理由からだろう。

 

つらつら書いたが、ここまで名刺というツールに思い入れがあるのもだから大切な知り合いに「作って」と言われたら手を抜けなくて大変だ(好きでやっているのだけど)。

 

これはまた長くなりそうなので別の記事で書きたいと思う。